コンビニやファーストフードが生活圏の一部となり、インスタント食品や加工食品が氾濫する中、健康食品やサプリメントが大変なブームになっています。“食”に対する不安が増大し、“健康”との係わりが注目されつつあるようです。
私たちの体は、住み着いた土地と、その土地で取れる食べ物にあわせて、何万年もかけて‘歩く速度で’進化してきました。ひとつの食べ物を完全に消化できるようになるのに、4世代・約100年かかるといわれています。流通の発達と急激な食生活の変化によって、私たちの体は病気に直面しているのです。
この本には、1930年代、世界中の未開人を調査した研究成果が記されています。白人文明の流入による食生活の変化が、人間の体にどのような変化をもたらしたか、特に顎や歯について克明に記されています。食生活を変化させての長期にわたる疫学調査や人体実験が事実上不可能なことから、食生活と健康を考える上で大変重要な文献であり、食に係わる人にはぜひ一読して欲しい書籍です。
食べ物が‘食品’すなわち商品として流通するようになって、現代の日本の食卓は、世界中からおいしいものが集められ、季節に関係なく、毎日がお祭りのようになっています。
昔はハレの日(お祝いや儀式の日)以外あまり口にできなかった肉やご馳走が、毎日のように食べられています。人間が長い年月かけて順応してきた健康な食生活、すなわち、昔のケの日(普段の日)の食事は、現代の食卓に比べると大変な“粗食”であるように思います。
民族それぞれに培ってきた食生活は、無用に免疫系を刺激することが無いため、毎日のように発生する遺伝子の複製ミス(癌細胞)や新たな病因に対して免疫系が機敏に反応し、自然治癒力を低下させないのだろうと考えられます。
穀類や野菜を中心に少量の魚や肉類を食べる‘粗食’こそが、文明病を予防し健康をもたらす食生活なのは間違いないようです。が、ちょっとさびしい。‘食’は楽しみであり、喜びや毎日の活力でもあるのです。
‘粗食’を食べているから癌にならないという保証はないし、‘美食’だから早死にするとは限らない。「酒も呑まずタバコもすわずに玄米と菜食で100歳まで生きた馬鹿がいる」のノンキ節ではないが、この点に難しさがあります。
現代医学を補完する代替医療Alternative Medicineとして、食生活を改善する“食養”があり、癌をはじめ多くの病気に対する治療効果が報告されています。病気になってから食事を改善しても効果はあるのです。でも、病気になる前に予防するほうがいいに決まっています。健康的な‘粗食’までいかなくても、私たちが心がけている(主に日本食育協会が勧めている)比較的実行しやすい‘食’についての知恵を、参考にしてほしいと思います。
1.健康的な粗食についてまず知ること。
自分の祖先が食べていたもの(明治〜昭和初期以前)の食生活を勘案し、それが本来の自分の食であることを認識する。大変な粗食であり、栄養素のバランスも、栄養学的に見ると疑問が残るが、この矛盾点こそ現代の栄養学の抱える矛盾であり、文明病を考えるヒントがあるように思われる。(日本の食生活全集…都道府県別全48巻 などを参照)
穀類や野菜を中心に少量の魚や肉類を食べる‘粗食’を健康食の目標にする。
2.よく噛んで食べる。
一口30〜50回噛んで食べる。咀嚼、嚥下は本能的にできるわけではなく、離乳期からの段階的な学習で身につける半反射運動なので、よく噛んで食べられない人は練習が必要。最初は数を数えながら噛んでみると、加工食品は苦痛であるが、野菜類は意外とすんなり出来てしまう。コツは、最初少し多めに口に入れること。飲み物で流し込まないようにすること。噛んで食べる習慣が身につくと、おのずと食事のメニューが健康的なものに変わっていきます。
唾液は、ほとんどの発癌物質を無毒化するし、よく噛むと健康的にやせる効果もあります。
3.食品選択10則(日本食育協会)
@飲料水は浄水器を使用する(逆浸透膜方式)。Aインスタント食品・加工食品を避け、出来るだけ素材で購入する。B色のついたものは避ける(人工色素)。C魚肉練り製品・漬物類も出来るだけ避ける。D缶やペットボトル入り飲料(清涼飲料水・コーヒー・ジュースなど)は、お茶・水以外とらないほうが望ましい。E味噌・醤油・食酢・食用油・自然塩・特に茶などは無添加無農薬のものであること。F近海魚介類は控えめとし、臓腑は避ける(特に養殖魚)。G鳥獣肉の臓物・脂身のところは避ける。H『JAS』マークのついた食品を購入する。Iあまり神経質にならずに以上のことを目安とする。
できるだけ多くとりたい食べ物
@穀類、特にお米。米は胚芽米か七分搗きにする。A豆類・豆製品。B緑黄色野菜と海藻類(野菜は生野菜よりおひたしなどの方がとり易い)。Cカルシウムの多い食品(骨ごと食べられる小魚など)。Dお酢。
できるだけ控えたい食べ物
@砂糖・加糖食品。A果物・果物ジュース。B動物性食品の脂身。C塩分・化学調味料。Dアルコールとタバコ。
食育food education とは、食養学の始祖ともいえる石塚左玄先生が明治期に造語し、日本のグルメの元祖「食道楽」の著者・村井玄斎翁が晩年「小児には知育よりも徳育よりも体育よりも食育が先」と説いたことに由来します。教育は「知育・徳育・体育」の‘3育’が目的とされますが、「毎日過不足なく栄養素を食物から取る工夫、食習慣としての食べ方の教育」“食育”こそ、まずなされなければならない教育なのです。
日本食育協会
1963年4月、故日野厚博士と蓬田康弘講師を中心に臨床栄養学研究を目的に小田原女子短期大学栄養科学研究所が開設されました。蓬田講師は、各地の婦人学級・老人大学などで実践的な食事改善法(買い方栄養学)を提唱、リーダー層とともに65年オルトビオス研究会を組織、全国的な食事改善運動を行ってきました。栄養科学研究所は75年、(財)オルトビオス健康財団に移管、80年代に入って、子供たちの心身の健康への危惧から、保育所・幼稚園PTAを対象とする食事改善運動を展開、92年5月から日本食育協会(会長・蓬田康弘)と改組し、今日に至っています。