歯並び異常を予防する子育て法
1.母乳で育てる
生まれたばかりの赤ちゃんにとって、お乳を吸うことは大変なことです。顔を真っ赤にしながら、あごや舌を動かす動作による刺激は、口の筋肉やあごの骨を通じて脳に伝わり、あごの骨を成長させていきます。
一方、哺乳瓶での授乳は、あまり力を使わなくてもミルクが飲めてしまいます。逆に、ミルクを飲み込むときには哺乳瓶からの流入を止める必要があるため、本来とは違った筋肉を使うこととなり、脳に適切な刺激が伝わらないとされています。
これらにより、できるだけ母乳で育てることが、歯並び異常を予防する第一歩と言えるでしょう。
物を食べる、飲み込む、咀しゃく・嚥下するといった作業は、本能的にできることにのように思われますが、離乳という段階を経て、口の周りの筋肉と神経系の反射を育て、段階的に学習しなければうまくできないということがわかってきました。
「噛む→飲み込む」という作業を学習しないと、固形物が噛めない、うまく飲み込めないという状態のまま育ち、あごに刺激が伝わらないために歯並び異常を起こすばかりか、飲み物で流し込まなければ食事ができないようになってしまいます。昔から行われてきた離乳という作業を、ゆっくりていねいに行う必要があります。
3.よく噛む習慣をつけよう
離乳がうまくいかなければ、なかなか物がうまく食べられず、食事に時間がかかってしまいます。忙しさに追われて急かしてしまいがちですが、お子さんにとっては大切な学習の時間。ゆとりをもって、ゆっくりよく噛む習慣を作ってあげましょう。
そうしたゆとりが、将来、矯正治療が必要になったり、歯の病気で苦しんだりすることのない、きれいな歯並びに育ててあげることにつながります。
小さなお子さんは、食事に飽きたり、遊んでしまったりと、少しもじっとしていません。食事時の姿勢やマナーをある程度の年齢に達したときに教えることは、歯並びを正常に育てる意味でも大切な教育(食育)です。
また、食事中にテレビを点けていると、常にその方向へ顔を向けてしまうため、あごや顔が曲がってしまうことがわかっています。きちんとした姿勢で食事をすることは、歯並び異常を予防する上で、とても大切です。
5.口を閉じて鼻で呼吸させよう
授乳期の上顎骨の成長が不十分だったり、蓄膿症(副鼻腔炎)などの病気で鼻呼吸ができず、口で呼吸する癖がついたり、いつもぽかんと口を開けていたりすると、口の周りの筋肉が発達せず、歯並び異常が起こります。口を閉じ、鼻で呼吸ができるよう意識したり、耳鼻科の治療を受けるとよいでしょう。
赤ちゃんの成長は、人類の進化の過程と同じだと言われています。受精卵からエラ呼吸をする魚のようになる胎児の過程を経て、人の形となって誕生します。そして、徐々にハイハイする(4足動物段階)ようになり、つかまり立ちからヨチヨチ歩き(猿の段階)になり、歩くことで脊椎にS状湾曲ができて、ヒトという動物になります。
直立二足歩行は、人間だけが獲得した体の形態です。子育ての段階できちんと段階を踏まなければ正しく成長できません。特に、4足動物段階(はいはい)、猿の段階(ヨチヨチ歩き)と、ヒトの段階(歩行)は、噛み合わせやあごの成長に密接に関係します。幼児期のいろいろな遊びや運動は、健康な体と歯並びを作る上でとても大切なのです。